「1店舗で成功したから、全店舗で導入」は本当に正解か
1店舗目でデリバリーがうまくいくと、「他の店舗にも同じ仕組みを入れれば売上が伸びるはず」と考えたくなります。しかし、同じブランド・同じメニュー・同じ本部のルールで運営していても、デリバリーの向き・不向きは店舗ごとにまったく違うことがあります。
この記事では、ハンバーガー専門店「WORLD BURGER」を複数店舗で運営する筆者が、池袋の東口店・西口店の2店舗で実際に下した判断をもとに、複数店舗オーナーがデリバリー導入を「店舗ごとに」判断するための4つの基準を整理します。
筆者の実例:池袋の東口店と西口店で、結論が逆になった
WORLD BURGERは池袋に東口店・西口店を近隣でドミナント出店しています。同じブランドで距離も近い2店舗ですが、Uber Eatsの運用は次のように分かれています。
| 西口店 | 東口店 | |
|---|---|---|
| 店舗の作り | カウンター中心の細長い造り。2名前後の来店が多い | 西口より広く、ソファー席が多い。団体客も多い |
| 席数に対する考え方 | 席が限られるため、満席時にあふれた需要の受け皿が欲しい | 回転率を最優先したい |
| Uber Eats | 導入・継続(満席時の受け皿として活用) | 最初は導入したが、現在は停止 |
| 判断の理由 | 席数の制約を、デリバリーで補える | 店内の回転を優先する方が合理的。そもそも西口のアカウントの方が最初から強かった |
ここで重要なのは、「東口店で失敗したから止めた」というより、店舗の特性と、ほかの店舗で持っている販路との兼ね合いで、止める方が合理的だったという点です。筆者は、同じブランドでも店舗は「個人の人格のようなもの」で、厨房設計・広さ・客層・客数といったオペレーションの細部が違えば、最適なツールやサービスの使い分けも変わると考えています。
店舗ごとにデリバリー導入を判断する4つの基準
池袋の2店舗の経験から、複数店舗オーナーが判断に使える基準を4つにまとめました(この4基準は、上記の実例から筆者が整理した考え方であり、統計的に検証されたルールではありません)。
基準1:席数の制約があるか(満席で機会損失が出ていないか)
席数が少なく、満席になる時間帯がはっきりしている店舗は、デリバリーが「席があふれた分の受け皿」として機能しやすい店舗です。西口店はまさにこのタイプで、店内に入れなかった需要をデリバリーで拾うという位置づけで使っています。
基準2:回転率を優先したい店舗か
席数に余裕があり、ソファー席や団体客が多くて「店内で回すこと」自体が収益の中心になっている店舗では、デリバリーの優先順位は下がります。東口店はこのタイプです。厨房とスタッフの手を店内に集中させた方が合理的な場合があります。
基準3:近くの自社店舗で、すでに販路を持っていないか
ドミナント出店(近隣に複数店舗を出す方式)の場合、配達エリアが重なります。すでに1店舗のアカウントが強いなら、近隣のもう1店舗で同じエリアに重ねて登録しても、運用の手間やコストに見合う上積みになるとは限りません。筆者の場合、西口店のアカウントの方が最初から強かったため、東口店では止めるという判断になりました。
基準4:繁忙時間にデリバリーを止められる運用になっているか
筆者は、忙しい時間帯は基本的にUber Eatsの受注を止める運用にしています。一方で、店内が暇な時間帯も家賃などの固定費は発生し続け、スタッフも配置しています。だからこそ、手が空いている時間帯に入る注文は追加の利益として大きいと感じています。この「繁忙時間は止め、閑散時間で拾う」という運用が店舗の厨房・人員体制で現実的にできるかどうかも、導入判断の重要な要素です。
判断に迷ったら:まず試して、店舗ごとに見直す
筆者自身の考え方は、「何が当たるかは想像するより、実際にやってみる方がはるかに速い」というものです。やってみると「意外とこのオペレーションでもできる」という発見が多くあります。ただし同時に、合わなければ止めることも前提にすることが大切です。東口店のように、いったん導入して止めるという判断も、失敗ではなく店舗特性を理解するための材料になります。
デリバリーには、広告を使わないと露出されにくい構造や、手数料の負担といったコスト面の現実もあります。筆者も最初は「この手数料は高い」と感じた一人です。手数料・広告・他社サービスとの違いについては、別記事で詳しくまとめています。
→ 関連記事:Uber Eatsを飲食店が導入するメリットと注意点(手数料・他社比較)
チェックリスト:自分の店舗は「デリバリー向き」か
- 満席で入店をお断りしている時間帯が、週に何度もある
- 店内が暇な時間帯に、スタッフと厨房に余力がある
- 近隣の自社店舗と、配達エリアが大きく重ならない
- 繁忙時間に受注を止める運用を、現場が無理なく回せる
- 商品が、配達中の時間経過に耐えられる(容器・メニュー設計を見直せる)
3つ以上当てはまる店舗は、試してみる価値があります。逆に当てはまる項目が少ない店舗は、無理に導入せず、店内の回転率改善や他の施策を優先した方がよい可能性があります。
よくある質問
Q. 複数店舗があるなら、全店舗で同じデリバリー設定にした方が管理は楽ではないですか?
A. 管理の手間は確かに減りますが、店舗の広さ・客層・席数が違えば最適解も違います。筆者は同じブランドの近隣2店舗でも、導入する店舗と停止する店舗を分けています。
Q. 一度導入した店舗で、デリバリーを止めても問題ありませんか?
A. 止めること自体は問題ありません。店内の回転率を優先した方が合理的だと判断できたなら、停止は有効な経営判断です。筆者の東口店もその例です。
Q. 近隣に自社店舗が複数ある場合、どちらの店舗でデリバリーをやるべきですか?
A. 席数が限られ、満席時の受け皿を必要としている店舗や、すでにアカウントの評価が強い店舗を優先する考え方があります。筆者は、カウンター中心で席数が限られる西口店に集約しました。
Q. 繁忙時間にデリバリーを止めると、評価が下がりませんか?
A. 受付停止の時間が長いと店舗評価に影響するという情報もあります。停止する時間帯は、店内が本当に回らない時間に絞るのが無難です。
まとめ
複数店舗のデリバリー導入は、「全店一律」ではなく「店舗ごと」に判断するのが基本です。席数の制約、回転率の優先度、近隣の自社店舗との重なり、繁忙時間に止められる運用かどうか、という4つの基準で見ると、同じブランドでも結論が分かれることがあります。まずは1店舗で試し、合わなければ止める。この前提で動けば、導入の判断はずっと軽くなります。
筆者プロフィール
ハンバーガー専門店「WORLD BURGER」経営者。経営歴9年、池袋西口本店・東口店、新潟駅前店、浜松駅前店の4店舗を運営。食べログ全国100名店(2024年・2026年連続受賞)、JAPAN BURGER BEST 50(2026年選出)。2026年「ジャパンバーガーチャンピオンシップ」予選会出場。デリバリー・モバイルオーダー・決済・厨房設備管理など、複数店舗運営で得た実務知見をもとに本メディアで発信している。
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