「公式LINEは一応始めた。でも、友だち追加してもらった後、何をすればいいのか分からない」
同業のオーナーさんと話していると、この悩みをよく聞きます。アカウントを開設すること自体は難しくありません。難しいのは、そこから先――友だちになってくれた人に、実際にもう一度来店してもらうところです。
私は複数店舗でハンバーガー専門店を運営しています。原価率がシビアな業態なので、新規のお客様を追いかけ続けるより、一度来てくださった方にもう一度来ていただく方が、経営的にはるかに効率がいいという実感を持っています。そして、そのリピート施策の中心に置いているのが公式LINEです。
この記事では、私が実際に運用している公式LINEアカウントの実数(登録者・ブロック率)を含めて、複数店舗運営の中で見えてきた「公式LINEをどう使えばリピーターにつながるのか」という実践知をお伝えします。ツールの機能比較記事ではありません。あくまで「何を、どういう考え方でやっているか」という運用の話です。
なぜ公式LINEなのか。答えは「プッシュ型」だから
Web集客の手段は色々あります。InstagramやX(旧Twitter)での発信、Googleマップ(MEO)対策、食べログなどのグルメサイト経由の予約――どれも大事な集客チャネルです。
ただ、これらの多くは「プル型」です。お客様が自分から検索したり、タイムラインをスクロールしたりして見に来てくれて初めて情報が届きます。店舗側から能動的に「見てください」と届けることはできません。
一方、公式LINEは「プッシュ型」です。店舗側からメッセージを送れば、登録してくれている方のトーク画面に直接届きます。お客様が自分から探しに来る必要がありません。この違いは、リピート施策を考える上で決定的に大きいと感じています。
新規集客はどうしても「見つけてもらえるかどうか」という運の要素が絡みますが、リピート施策は「すでに一度来てくれた、店を知っている人」が相手です。この人たちに対しては、店側から能動的にアプローチできるチャネルを持っているかどうかが、リピート率をそのまま左右します。私が公式LINEをリピート施策の基本に据えている最大の理由は、ここにあります。
リピートされない最大の理由は「忘れられること」
複数店舗を運営する中で、私が実感として持つようになった考え方があります。それは、お客様が再来店しない一番の理由は、「味が合わなかった」でも「価格が高かった」でもなく、単純に「忘れられている」ことなのではないか、ということです。
これは何かの統計データに基づいた話ではなく、あくまで日々の店舗運営を通じて感じている経験則です。美味しいと思って食べてくれたお客様でも、日常に戻ればすぐに他の情報に埋もれてしまいます。特に外食は選択肢が多い業界です。「また行きたい」と思ってくれていても、思い出すきっかけがなければ、そのまま忘れられて終わってしまう。これは決して珍しいことではないと感じています。
だとすれば、店側がやるべきことはシンプルです。定期的に、思い出してもらうきっかけを作り続けること。 公式LINEをリピート施策の軸に置いているのは、この「思い出してもらう」ための、もっとも直接的で確実な手段だと考えているからです。
来店時のLINE登録が、すべての起点になる
公式LINE施策は、登録してもらえなければ何も始まりません。当たり前のようですが、ここが一番大事な入り口です。
私の店では、来店時に公式LINEへの登録をお願いする導線を用意しています。すでに来店して、実際に商品を食べてくれているお客様は、初めましてのお客様よりもずっと登録のハードルが低い状態にあります。「今ここにいる、興味を持ってくれている人」に登録してもらうのが、もっとも効率のいいタイミングです。
新規のお客様をゼロから公式LINEに誘導しようとしても難しいですが、来店という接点がすでにある状態であれば、登録のお願いは自然な流れになります。ここで登録していただいた方が、その後のリピーター施策の対象になっていきます。
登録後にやっていること:段階的に情報を届ける設計
登録していただいた後、何をどう届けるかについては、私の店でも一定の設計を持って運用しています。
具体的には、登録直後の挨拶メッセージに始まり、その後数回にわたって段階的に情報を届けていく設計にしています。いきなり売り込み一色のメッセージを連発するのではなく、最初は挨拶や店の紹介から入り、徐々にお得な情報や人気メニューの案内、来店を後押しする特典の案内へとつなげていくイメージです。
正直に書いておくと、この設計の細部(どのタイミングで何通目を送るか、といった具体的な運用ノウハウ)については、店舗ごとにチューニングを重ねている部分でもあり、この記事で「型」として断定的な数値をお伝えするのは避けます。大事なのは通数や日数そのものではなく、「登録直後に一度きりの案内をして終わり」にしないこと、そして「最初から特典やクーポンの連打にしないこと」の2点だと考えています。登録してすぐに機械的な売り込みが続くと、それこそブロックされる原因になります。
「お得な状態」を作っておく
段階的な情報発信と並行して、公式LINE経由でクーポンやスタッフカード(会員証のようなもの)を発行し、「登録しておくとお得」という状態を作っています。
これは単発の割引施策というより、「公式LINEに登録していること自体に価値がある」と感じてもらうための仕組みです。友だち追加した瞬間にメリットがあれば、登録のハードルが下がりますし、その後の配信も「お得な情報が来るかもしれない」という前向きな期待とともに受け取ってもらいやすくなります。
最初の1ヶ月は集中的に、その後も毎月1回は必ず
配信の頻度についても、私なりの運用ルールがあります。
- 最初の1ヶ月は、ウザがられない程度を意識しながら、比較的集中的にアプローチします。登録直後は店への関心が高いタイミングなので、このタイミングをうまく使わない手はないと考えています。
- 2ヶ月目以降は、頻度を落としつつも、最低でも毎月1回は必ず何かしらのアプローチをするようにしています。
「毎月1回」という頻度を維持するには、当然ながら毎回送れるだけのネタが必要です。ここで効いてくるのが、期間限定メニューを定期的に開発するという取り組みです。新しいメニューが出るたびに、それ自体が「思い出してもらうきっかけ」になり、配信するネタにもなります。単なる販促施策ではなく、公式LINE運用を継続させるための仕組みとして、期間限定メニューの開発を位置づけている面があります。
目的は一貫しています。売り込むことそのものより、「忘れられないこと」「思い出してもらうこと」が最優先の目的です。
| 時期 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 登録直後〜1ヶ月 | 挨拶から始め、段階的に情報を届ける(ウザがられない範囲で集中的に) | 関心が高いうちに接点を作る |
| 2ヶ月目以降 | 頻度は落としつつ、最低でも毎月1回は必ず配信 | 忘れられないための最低ラインを維持 |
| 継続的に | 期間限定メニューを定期開発し、配信ネタにする | 毎月のアプローチを継続させる仕組み化 |
ブロックをどう考えるか。実数で見えてきたこと
公式LINEの運用を始めた当初、私にもためらいがありました。「あまり案内しすぎると、ウザがられてブロックされるのではないか」という不安です。この不安は、おそらく多くのオーナーが同じように感じているのではないかと思います。
ただ、実際に運用を続けて実数を見てみると、考え方が変わりました。私の店舗の公式LINEアカウントの実績は次の通りです。
- 登録者数:約7,500人
- ブロック数:約1,300人
- 実質的にアプローチできる対象:約6,200人
たしかに1,300人はブロックしています。これだけ見ると多いと感じるかもしれません。ですが、ここで私が意識するようにしたのは、「ブロックする層は、そもそも元々もう来店しない可能性が高い人だ」と割り切るという考え方です。
配信頻度を上げたからブロックされたのか、そうでなくてもいずれブロックしていた層なのかは、厳密には切り分けが難しい部分もあります。ただ、少なくとも言えるのは、1,300人がブロックしていても、残りの6,200人以上には引き続きアプローチができているという事実です。ブロックされることを過度に恐れて配信を控えめにしてしまうと、本来アプローチできたはずの6,200人に対しても機会を逃すことになります。
「ブロックされるのが怖いから配信しない」のではなく、「ブロックされる一定数は織り込みながら、届けられる相手には確実に届け続ける」方が、マーケティングとして明らかに合理的だというのが、実際の運用を通じてたどり着いた結論です。
公式LINE運用チェックリスト
自店の公式LINE運用を見直す際に、確認しておきたい項目をまとめました。
- 来店時に公式LINEへ登録してもらう導線ができているか
- 登録直後、挨拶だけで終わらず、その後も段階的に情報を届ける設計になっているか
- 登録者にとって「お得な状態」(クーポン・スタッフカードなど)を用意できているか
- 登録後1ヶ月は集中的に、それ以降も最低月1回はアプローチできているか
- 毎月配信し続けるためのネタ(期間限定メニューなど)を継続的に用意できているか
- ブロック数・登録者数を定期的に確認し、実質的なアプローチ対象数を把握しているか
- ブロックを過度に恐れて配信を控えすぎていないか
すべてを一度に整えるのは難しいと思います。まずは「来店時の登録導線」と「毎月最低1回の配信」の2つから始めるだけでも、変化を感じやすいはずです。
まとめ:公式LINEは「攻める」ツールとして使う
複数店舗を運営してきた実感として、公式LINEは単なる「お知らせ配信ツール」ではなく、リピーターを育てるための能動的な武器だと捉えています。
- リピート施策の基本を公式LINEに置いている理由は、店舗側から能動的にアプローチできる「プッシュ型」だから
- お客様がリピートしない最大の理由は、私の経験則では「忘れられていること」にある
- 来店というタイミングを逃さず、公式LINE登録につなげる導線を作る
- 登録後は、挨拶から始まり段階的に情報を届ける設計を持ち、「お得な状態」も用意する
- 最初の1ヶ月は集中的に、その後も毎月1回は必ずアプローチを続ける。そのために期間限定メニューを定期開発する
- ブロックは一定数発生するものと割り切り、届けられる相手には確実に届け続ける方が合理的
派手な施策ではありませんが、地道に「忘れられない状態」を作り続けることが、結果的に一番効くリピート施策だというのが、複数店舗を運営してきた中での実感です。まだ公式LINEを「開設しただけ」で止まっている方は、まず来店時の登録導線を見直すところから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 公式LINEとInstagramなど他のSNSでは、リピート施策としての役割がどう違いますか?
A1. 一番の違いは「プッシュ型」か「プル型」かです。公式LINEは店舗側から登録者のトーク画面に直接メッセージを届けられるプッシュ型のため、お客様に見つけてもらう必要がありません。InstagramやXは、お客様が自分からタイムラインを見に来てくれて初めて情報が届くプル型で、新規のお客様に広く知ってもらう役割には向いていますが、リピート施策の即効性という点では公式LINEの方が強いと感じています。
Q2. 配信頻度を上げるとブロックされそうで怖いのですが、どう考えればいいですか?
A2. 私自身も同じ不安を持っていました。ですが、実際の運用実績(登録者約7,500人・ブロック約1,300人・実質アプローチ対象約6,200人)を見て、「ブロックする層は元々もう来店しない可能性が高い人」と割り切るようになりました。ブロックを過度に恐れて配信を控えると、本来アプローチできたはずの層にまで機会を逃すことになります。ただし、登録直後から売り込み一色にするなど、明らかにウザがられる配信の仕方は避けるべきだと考えています。
Q3. 公式LINEの登録者を増やすには、どうすればいいですか?
A3. 私の店では、来店時に登録をお願いする導線を用意しています。すでに来店し、商品を食べて興味を持ってくれているお客様は、初めましての状態から誘導するより登録のハードルが格段に低いです。まずは「今、店にいるお客様」に登録してもらう導線を整えることが、もっとも効率のいい出発点だと考えています。
Q4. 登録直後は、具体的に何を送ればいいですか?
A4. 私の店では、登録直後の挨拶メッセージに始まり、その後数回にわたって段階的に情報を届けていく設計にしています。いきなり特典の連打にするのではなく、挨拶や店の紹介から入り、徐々にお得な情報や人気メニューの案内につなげるイメージです。具体的な日数や通数は店舗の業態・客層によって調整すべき部分だと考えているため、この記事では断定的な型としてはお伝えしていません。
Q5. 配信を毎月続けるためのネタが尽きてしまいます。どうすればいいですか?
A5. 私の店では、期間限定メニューを定期的に開発することで、配信するネタを継続的に確保しています。新しいメニューが出ること自体が「思い出してもらうきっかけ」になり、そのまま配信内容にもなります。単なる販促施策としてだけでなく、公式LINE運用を毎月継続させるための仕組みとして期間限定メニュー開発を位置づけると、ネタ切れを防ぎやすくなります。
著者プロフィール
グルメバーガー専門店「WORLD BURGER」を池袋2店舗・新潟・浜松の合計4店舗(直営・FC含む、2021年開業・6年目)で運営。食べログ全国100名店(2024年・2026年連続受賞)、2026年ジャパンベストバーガー50選出(ジャパンバーガーチャンピオンシップ予選会)など第三者評価も受けている。店舗運営と並行して、Web集客や購買心理学を実践的に活用した店舗づくりに取り組んでおり、公式LINEを活用したリピーター施策も、実際に自店で運用しながら試行錯誤を重ねてきた実践知にもとづいている。本記事も、実際の店舗運営で得た一次情報にもとづいて執筆している。
複数店舗オーナーが実践する経営ノウハウ
この記事のテーマ以外にも、実際に飲食店を経営する上で役立つ実践知も発信しています。
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