「今月のシフト表、誰が作るんだっけ」
複数店舗を運営していると、月末が近づくたびにこの空気が漂います。LINEグループには希望シフトの申請がバラバラのタイミングで流れ込み、店長ごとにExcelのフォーマットが微妙に違い、締切を過ぎても提出しないアルバイトが必ず数人いる。それを一つひとつ手作業でまとめて、店舗をまたいだ人員の過不足にも目を配って……。この作業に毎月何時間も溶かしている店主さんは、私だけではないはずです。
「勤怠・シフト管理サービスを入れれば楽になる」という話は、どの店主さんも一度は耳にしていると思います。ただ、いざ検討しようとすると、サービスの数が多すぎてどれから見ればいいのか分からない。料金ページを見ても「要問い合わせ」ばかりで、結局比較のしようがない。そう感じたことがある方に向けて、この記事では複数店舗を運営する飲食店オーナーという立場から、経営ラボのリサーチ部が調べた主要6社を公正に比較します。
先に結論を言ってしまうと、「これさえ入れれば絶対に間違いない」という単一の正解は、このジャンルには存在しません。 会計ソフトのように機能の差が分かりやすい市場と違って、勤怠・シフト管理は「自分の店がPOSに何を使っているか」「何店舗を、何人のアルバイトで回しているか」「バックオフィスに専任の人がいるか」によって最適解がまったく変わってきます。だからこそ、比較表と選び方の軸を先に押さえてから検討することをおすすめします。
飲食店が勤怠・シフト管理サービスで悩みやすい3つのポイント
サービス選びの前に、飲食店特有の悩みを整理しておきます。他業種向けの比較記事だと、この視点が抜け落ちていることが多いからです。
- アルバイト・パートの比率が高い:正社員中心の職場と違い、月ごとに希望シフトを大量に集めて調整する作業が発生します。紙やExcel、LINEだけで運用していると、店長の負担が際限なく増えます。
- 複数店舗をまたいだ人員のやりくりが必要:ある店舗は人手が余り、別の店舗は足りない、という状況が日常的に起きます。店舗間でヘルプを募集・調整する仕組みがあるかどうかは、店舗数が増えるほど効いてきます。
- 打刻方式・POSレジが店舗ごとにバラバラなことがある:居抜きで買収した店舗、業態違いで別のPOSを使っている店舗など、複数店舗運営では打刻・レジの環境が統一されていないケースも珍しくありません。
この3つの悩みのうち、自分の店で一番切実なのはどれか。それを言語化してから比較表を見ると、選ぶべきサービスがかなり絞り込めます。
比較表:料金・機能・向いている規模
※料金は各社公式サイトの一次情報を基準にしています。非公開の項目はその旨を明記していますので、実際の導入額は必ず個別に見積もりを取ってください。
| サービス | 提供元 | 初期費用 | 月額料金(税込目安) | シフト作成機能 | 複数店舗対応 | 向いている規模・特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| スマレジ・タイムカード | 株式会社スマレジ | 0円(30日間全機能無料) | スタンダード:10名まで0円/11名以上1,210円+110円/人。プレミアム:10名まで2,420円/11名以上+385円/人。プレミアムプラス:10名まで4,840円(スマレジPOS契約者は2,420円)/11名以上+495円/人 | プレミアム以上のプランに搭載 | 専用の多店舗機能は明記なし。人時売上高・法定三帳簿などの集計は多店舗運用にも活用可 | 既にスマレジPOSを使っている1〜数店舗。10名以下なら無料で始められる |
| ジョブカン勤怠管理 | 株式会社DONUTS | 0円 | 1機能利用で1人月額200円(税抜)、機能追加ごとに+100円/人。最低利用料金2,000円/月(税抜) | シフト管理を4機能の一つとして選択可能(LINE連携でのシフト確認、シフト募集メール送信など) | 複数店舗一括管理・リアルタイム人件費率把握に対応(飲食業界向け訴求あり) | 必要な機能だけ絞って低コストで始めたい1〜数店舗 |
| KING OF TIME | 株式会社ヒューマンテクノロジーズ | 0円(有料打刻機器利用時のみ発生) | 330円/人・月 | 同シリーズ製品(KING OF TIME シフト管理等)との連携で対応 | 拠点別労働時間の自動集計、拠点ごとに異なる打刻方式の併用が可能 | 店舗ごとに打刻方式を変えたい・打刻の柔軟性を重視する中堅〜大手チェーン |
| シフオプ | 株式会社リクルート | 0円 | 300円/人・月〜(段階詳細は要問い合わせ) | 希望シフト自動反映、締切メール自動送信、ガラケー含む多デバイス提出対応 | 店舗間ヘルプ募集の一括連絡機能が特徴。100名超の大規模多店舗チェーンでの導入事例あり | 多店舗間の人員融通・シフト調整を最重視する大規模チェーン |
| Airシフト | 株式会社リクルート | 0円(開始月+翌月2ヶ月無料) | 330円/人・月(2人以下は一律990円/月) | 希望シフト自動反映、チャットでの急な出勤依頼・調整、シフト作成アシスト機能 | 同一AirIDで複数店舗の作成・一括管理が可能 | 既にAirレジ・Airペイなど「Airビジネスツールズ」を使っている店舗 |
| SmartHR | 株式会社SmartHR | 0円(見積制) | 非公開(従業員数・利用機能に応じた見積制) | 勤怠管理機能は2025年4月に本体機能化。専用シフト作成機能の詳細は未確認 | 明記なし(要確認) | 勤怠だけでなく社会保険・年末調整など労務全体を一元化したいバックオフィス体制のある店舗 |
用途別ベスト:あなたの店ならどれを検討すべきか
POS連携を重視するなら「スマレジ・タイムカード」
すでにスマレジPOSを使っている店舗にとって、スマレジ・タイムカードはID連携によって導入の手間・追加コストが少ないという明確な強みがあります。10名以下の店舗であればスタンダードプランが0円で使える点も、1〜2店舗の小規模飲食店にとって入口として弱点が少ないポイントです。登録事業所数は12.4万を突破しており、公式にも「飲食店業界を中心に導入が進んでいる」と訴求されています。ただし、シフト作成機能はプレミアム以上のプラン限定である点は事前に確認しておく必要があります。
とにかく安く、必要な機能だけ入れたいなら「ジョブカン勤怠管理」
ジョブカン勤怠管理は「出勤管理」「シフト管理」など機能単位で選べる従量課金制が特徴です。今すぐ全部の機能はいらない、まずは打刻とシフト管理だけ入れたい、という店舗であれば、最低利用料金2,000円/月から始められる設計は魅力的です。複数店舗の一括管理・リアルタイムの人件費率把握にも対応しており、飲食業界向けに公式にも訴求されています。累計導入実績はジョブカンシリーズ全体で15万社超と、実績面での安心感もあります。
打刻の柔軟性を重視するなら「KING OF TIME」
KING OF TIMEは打刻方式が16種類以上と、比較対象の中でも群を抜いて柔軟です。330円/人・月という価格も、比較した6社の中で安い部類に入ります。複数店舗・拠点ごとに異なる打刻方式(ICカード・モバイルなど)を併用できるため、居抜きなどで打刻環境がバラバラになりがちな複数店舗運営との相性は良いはずです。実際に、集計時間を5時間に短縮できた飲食業の導入事例もあります。ただし、シフト「作成」自体は同シリーズの別製品との連携が前提になっている点は押さえておいてください。
多店舗間の人員融通を最重視するなら「シフオプ」
シフオプは、店舗間で人手が余っている・足りないという状況を一括で調整する「ヘルプ人員の一括募集」機能が際立っています。100名超の大規模多店舗チェーンでの導入事例があることからも分かる通り、比較的規模の大きい多店舗展開企業向けの色合いが強いサービスです。個人店〜数店舗規模だと機能が過剰になる可能性があり、また料金の段階的な詳細が非公開のため、導入を検討する場合は早めに問い合わせて自店の規模感に合うか確認することをおすすめします。
既にAirビジネスツールズを使っているなら「Airシフト」
Airレジ・Airペイなど「Airビジネスツールズ」を既に導入している店舗であれば、同一のAirIDでAirシフトも扱えるため、導入のハードルが低くなります。freee人事労務など外部の給与計算ソフトへのデータ連携にも対応しています。一点だけ注意が必要で、Airシフトは2025年1月に月額料金が110円/人から330円/人へ値上げされています。以前の情報のまま検討してしまうと想定と違う金額になるため、最新の料金は必ず公式サイトで確認してください。
労務手続き全体を一元化したいなら「SmartHR」
SmartHRは、勤怠管理そのものよりも、社会保険手続きや年末調整といった労務業務全体の効率化に強みがあるサービスです。勤怠管理機能は2025年4月に本体機能として新しく提供が始まったばかりで、飲食店特有のシフト作成・多店舗の人件費管理に特化した機能があるかどうかは、今回の調査では確認できませんでした。料金も従業員数・利用機能に応じた見積制で非公開のため、バックオフィスの担当者を置ける規模の店舗でなければ、情報収集の段階からややハードルが高いと感じます。
小さな飲食店(1〜数店舗)に絞ると、有力なのは2択
ここまでの整理を踏まえると、「1〜数店舗・アルバイト比率が高い・バックオフィス専任者がいない」という多くの飲食店オーナーが置かれている状況では、価格の低さと導入のしやすさのバランスで、スマレジ・タイムカード(POS利用店)とジョブカン勤怠管理(POS非依存で機能を絞りたい店)の2つが有力候補になります。
どちらが自店に合うかは、結局「今どのPOSレジを使っているか」で決まる部分が大きいです。既にスマレジPOSを使っているならスマレジ・タイムカードのID連携メリットが大きく、POSレジと勤怠管理を別々に検討したい・とにかく必要な機能だけに絞って安く始めたいならジョブカン勤怠管理、という住み分けになります。この2社に絞って優劣を断定するには材料不足なので、この記事では「単一の正解」を提示するのではなく、この後の選び方の軸で自店に当てはめて判断してください。
選び方の軸チェックリスト
最後に、比較検討の順番を整理します。
- 今使っているPOSレジは何か → スマレジPOSならスマレジ・タイムカードのID連携が有利。それ以外なら、勤怠単体サービスの中から選ぶ。
- 何にコストをかけられるか → 従業員10名以下ならスマレジ・タイムカードのスタンダードプランが無料。機能を絞って安く始めたいならジョブカン勤怠管理。
- 打刻環境が店舗ごとにバラバラか → ICカード・モバイルなど打刻方式を店舗ごとに変えたいなら、16種類以上の打刻方式に対応するKING OF TIMEを検討。
- 店舗間の人員融通が一番の悩みか → 100名超の多店舗チェーンで、ヘルプ人員の一括募集を重視するならシフオプ。
- Airビジネスツールズを既に使っているか → 使っているならAirシフトが導入しやすい。ただし2025年1月の値上げ後の最新料金は必ず確認。
- 労務全体を一元化したいか → 社会保険・年末調整まで含めて一本化したい、バックオフィス人員がいるならSmartHRも選択肢に入るが、料金は個別見積もりが前提。
どのサービスも、公式サイトの情報だけでは自店にとっての実額・実運用が見えきらない部分があります。この記事の比較表とチェックリストを手元に、まずは自店の状況(POS・店舗数・重視するポイント)を言語化した上で、候補を2〜3社に絞って問い合わせてみることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 飲食店の勤怠・シフト管理サービスで「これが一番」と言えるものはありますか?
A1. ありません。会計ソフトのように機能差がはっきりした市場と違い、勤怠・シフト管理は店舗のPOS利用状況・店舗数・バックオフィス体制によって最適解が変わる「用途別ベスト」型の市場です。まずは自店が何を最も重視するかを言語化することが重要です。
Q2. すでにスマレジPOSを使っている場合、何を検討すべきですか?
A2. スマレジ・タイムカードがID連携によって導入コスト・手間が少なく有利です。10名以下であればスタンダードプランが無料で使える点も入口として検討しやすいポイントです。
Q3. とにかく安く始めたい場合はどうすればいいですか?
A3. ジョブカン勤怠管理は機能を単位ごとに選べる従量課金制で、最低利用料金は2,000円/月(税抜)からです。必要な機能だけに絞ることで低コストに抑えられます。
Q4. 複数店舗間で人手を融通し合いたい場合に向いているサービスは?
A4. シフオプが店舗間のヘルプ人員一括募集機能で優位です。ただし100名超の大規模多店舗チェーンでの導入事例が中心のため、数店舗規模の場合は機能が過剰になる可能性があります。導入前に自店の規模感に合うか問い合わせて確認することをおすすめします。
Q5. Airシフトの料金で注意すべき点はありますか?
A5. 2025年1月に月額料金が110円/人から330円/人へ値上げされています。以前の情報のまま検討すると想定と異なる金額になるため、必ず公式サイトで最新の料金を確認してください。
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