アルバイトの採用契約書、毎月何枚書いていますか。
複数店舗でアルバイト・パートを多く雇っていると、この「契約書仕事」がじわじわと重くのしかかってきます。新規採用のたびに雇用契約書を作り、店舗に郵送し、サインをもらって回収し、原本を保管する。契約更新の時期が重なると、この作業が数十件・数百件単位で一気に発生することもあります。紙とハンコでこれをやると、回収漏れ・記入漏れ・保管場所の問題が必ずついて回ります。
私自身、複数店舗を運営する立場として、この負担は実感しています。今はまだ書類とハンコで契約を交わしていますが、電子化できる余地は大きいと感じ、今回は経営ラボのリサーチ部と一緒に、主要な電子契約サービス5社(クラウドサイン、GMOサイン、freeeサイン、マネーフォワード クラウド契約、ジンジャーサイン)を、公式情報だけを根拠に比較しました。
先に結論を言うと、多くの飲食店には、送信単価が最も安いGMOサインをおすすめします。 小さな飲食店にとっては、大手の導入実績よりも「毎月の実費がいくらか」の方がずっと重要だからです。ただし、社内稟議で実績の裏付けが必要な場合はクラウドサインも選択肢に入ります。この記事では、その理由を送信単価ベースの具体的なコストシミュレーションとあわせて整理します。
結論:多くの店舗にはGMOサイン。コストと機能面を最優先で選ぶ
飲食店が電子契約サービスに求める要件は、突き詰めると次の3つだと考えています。
- アルバイト雇用契約書を高頻度・大量に一括送信できること
- テンプレートに氏名・時給・勤務地などを差し込むだけで作成できること
- 送信件数が多くなるほど効いてくる「1件あたりの単価」が低いこと
この3点、つまりコストと機能面をベースに5社を見ていくと、送信単価が最も安く、一括送信の上限件数も大きいGMOサインが最有力候補になります。クラウドサインは飲食チェーンでの詳細な公開事例を持つ点で実績面は優位ですが、送信単価はGMOサインの2倍以上です。小さな飲食店にとっては、実績の裏付けよりもコストと機能面を優先する方が合理的だと考えています。マネーフォワード クラウド契約とジンジャーサインは、そもそも公式サイトに具体的な月額料金が載っておらず、他社と横並びで比較すること自体ができませんでした。この点は誠実に「わからない」と書いておきます。
比較表:料金・機能・向いている規模
料金は各社の公式一次情報のみを掲載しています。非公開の項目は「非公開」と明記し、第三者サイトの数字は掲載していません。
| サービス | 最安有料プラン月額(税込目安) | 送信単価目安 | 一括送信機能 | 向いている規模・店舗 |
|---|---|---|---|---|
| クラウドサイン | 12,100円(Light) | 242円/件 | ○(CSV差込・有料プランのみ) | 複数店舗〜大規模チェーンで、事例に基づく説得力を重視したい店舗 |
| GMOサイン | 9,680円(ライト、年間契約) | 110円/件(立会人型)/330円/件(当事者型) | ○(1回の一括送信上限1,500件) | 送信件数が多く、とにかく単価を抑えたい複数店舗展開の店舗 |
| freeeサイン | 5,980円〜(Starter、年払) | 月50〜100通までの定額枠(一括送信はStandard以上限定) | Standard以上のみ | すでにfreee会計・freee人事労務を使っている店舗 |
| マネーフォワード クラウド契約 | 非公開 | 従量課金なし(送信件数無制限と公式に明記) | 詳細非公開 | 送信件数無制限という設計思想は高頻度採用の店舗に理論上合うが、金額不明で判断不能 |
| ジンジャーサイン | 非公開 | 非公開 | 詳細不明 | 勤怠・給与で「ジンジャー」シリーズを既に使っている店舗 |
※フリープランはクラウドサイン月2件まで、GMOサイン月5件まで。アルバイト採用を継続的に行う店舗ではすぐに上限を超えるため、実質的には有料プランでの比較が現実的です。
送信単価で読み解く「月10件・50件・100件」の年間コスト差
ここが今回いちばん伝えたいところです。電子契約サービスは基本料金だけを見ても実態がわかりません。飲食店のように「毎月一定数の契約書を送り続ける」使い方では、基本料金+「1件あたりの送信単価×件数」で年間コストが決まります。
クラウドサインとGMOサインは、どちらも料金体系が「基本料金+送信単価」で公開されているため、実際に試算できます。両プランともユーザー数・送信数そのものに上限はなく、差が出るのは送信1件あたりの単価です。
- クラウドサイン(Light):月額12,100円 + 242円 × 送信件数
- GMOサイン(ライト):月額9,680円 + 110円 × 送信件数(立会人型)
| 月間送信件数 | クラウドサイン月額 | GMOサイン月額 | 月間の差額 | 年間の差額 |
|---|---|---|---|---|
| 10件 | 14,520円 | 10,780円 | 3,740円 | 約44,880円 |
| 50件 | 24,200円 | 15,180円 | 9,020円 | 約108,240円 |
| 100件 | 36,300円 | 20,680円 | 15,620円 | 約187,440円 |
月10件程度の小規模な採用であれば差額は年間4万円台にとどまりますが、複数店舗でアルバイトの新規採用・契約更新をまとめて行う店舗になると、月50件で年間10万円超、月100件規模になると年間18万円超の差になります。参考までに、後述するクラウドサインの飲食チェーン事例では月平均100件程度を処理しているとのことなので、送信件数がこの水準に近づくほど、単価の差はそのまま経営インパクトになります。
なお、GMOサインには取引先など本人確認を伴う「当事者型電子署名」(330円/件)という上位オプションもあります。業者との取引契約など、より厳格な本人確認が必要な文書に使う場合は単価が変わる点も押さえておいてください。
クラウドサインが強い理由:全国70店舗チェーンの詳細事例
クラウドサインの最大の強みは、送信単価の安さではなく「飲食チェーンでの具体的な導入実績が公式に公開されている」ことです。
全国約70店舗を展開する飲食チェーンが2018年8月からクラウドサインを導入し、店舗からの入社申請システム(kintone)と連携させて、月50〜300人が入社する中で月平均100件程度の契約書を処理しています。アルバイトの一括更新時には1,000件以上を一度に送信することもあるとのことです。導入前は2.5人体制で回していた契約書業務が1人で完結するようになり、書面時代は7割程度だった契約書の回収率も、確実に7割を超える水準まで改善したと公式事例で紹介されています。
「うちの規模でも同じような効果が出るのか」と不安に思う方もいると思いますが、少なくとも複数店舗規模での定量的な改善データが公式に存在するサービスは、今回調べた5社の中ではクラウドサインだけでした。この点は、社内で導入を稟議にかける際の説得材料としても使いやすいはずです。
またクラウドサインは、富士キメラ総研の調査(2022年度実績)で売上高ベースの国内シェアNo.1とされています。実績・信頼性を重視するなら、現時点ではクラウドサインが一歩リードしていると言えます。
GMOサインが強い理由:送信単価の低さと大量一括送信への対応力
一方でGMOサインは、送信単価110円/件というコスト面の優位性に加えて、一度に送信設定できる件数の上限が1,500件と明記されている点も見逃せません。契約更新が集中する時期にまとめて送る飲食店にとって、この上限の大きさは実務上の安心材料になります。
ここで正直に注記しておきたいのですが、GMOサインは公式note記事で「導入企業数350万社超(2024年12月時点)」という数字を公表しています。ただしこれは無料プランを含む導入企業数であり、実際に料金を払っている「有料契約企業数」とは別の概念です。この数字だけを見て「業界最大手だから安心」と判断するのは早計で、有料契約ベースでの規模感は公式には確認できませんでした。
また、GMOサイン単体での飲食店の詳細な導入事例(クラウドサインのゼットンの事例のような定量データ)は、今回の調査範囲では見つかりませんでした。空港のグランドハンドリング企業(アルバイト約800名規模)の事例は公開されていますが、業種は異なります。コストでは明確に優位、実績の生々しさではクラウドサインに一歩譲る、というのが正直な評価です。
freeeサイン・ジンジャーサインは「既存システムとの連携」で選ぶ
freeeサインには、汎用の電子契約とは別に「freee人事労務 雇用契約」という専用機能があります。freee人事労務の画面上で雇用契約書の作成から送信・締結までが完結し、従業員情報が契約書に自動反映されるため転記ミスを防げます。料金は1IDあたり月額200円(税抜)で、これはfreeeサイン本体の最安プラン(Starter月額5,980円〜)よりもかなり安く導入できます。ただし利用にはfreee人事労務の有料プラン契約が別途必要で、取引先との一般契約書を扱うにはfreeeサイン本体の契約も必要になります。すでにfreeeで労務管理をしている店舗であれば検討価値がありますが、これから電子契約だけを目的に新規導入する場合の第一候補にはなりにくいというのが実情です。
freeeサインの一括送信機能はStandardプラン(月額35,760円・年払29,800円、月100通まで)以上でしか使えず、Starterプラン(月額7,180円・年払5,980円、月50通)では一括送信そのものができません。高頻度採用の飲食店がfreeeサインを検討する場合、必ずStandard以上が前提になる点は事前に確認しておくべきです。
ジンジャーサインは、勤怠・給与・人事労務データと連携できる統合型システム「ジンジャー」の一部として提供されています。すでにジンジャーシリーズを使っている店舗であれば連携メリットがありますが、料金プランが公式サイトに一切記載されておらず、比較サイトも軒並み「要問い合わせ」としています。一部の第三者サイトに「月額1万円〜」という記載がありましたが、公式情報ではないため今回の記事では採用していません。料金がわからない以上、この記事で積極的に推奨することはできないというのが正直な立場です。
マネーフォワード クラウド契約:設計思想は魅力だが金額が非公開
マネーフォワード クラウド契約は、公式に「契約件数に応じた従量課金を気にすることなく利用できる」「送信件数による課金や制限はない」と明記しています。これは高頻度でアルバイト契約を送る飲食店にとって、理論上はとても相性の良い料金設計です。
弁護士監修の「アルバイト雇用契約書(飲食店向け)」テンプレートが公式サイトで公開されているなど、飲食店を意識した機能面での配慮も見られます。マネーフォワードのクラウドシリーズ全体では飲食業界での導入実績が20社以上あるとのことですが、これらは主に会計・給与・経費精算の事例で、電子契約(クラウド契約)単体での飲食店事例は確認できませんでした。
問題は、クラウド契約単体の具体的な月額料金が公式ページに明記されていないことです。検索すると「ひとり法人2,480円/スモールビジネス4,480円/ビジネス6,480円」という数字が出てきますが、これはクラウド会計などとのセット料金であり、クラウド契約単体の金額として確認することはできませんでした。設計思想は魅力的なだけに、金額が不透明なのは残念な点です。他社との定量比較ができない以上、現時点でこの記事の主軸には据えられません。
使い分けガイド:あなたの店ならどれを検討すべきか
- とにかく年間コストを抑えたい、送信件数が多い → GMOサインが最有力候補です。月50件以上の送信がある店舗なら、クラウドサインとの年間コスト差は10万円を超えてきます。
- 社内稟議で「実績」の裏付けが欲しい、複数店舗展開で説得力のある事例を示したい → クラウドサインが有力です。全国70店舗規模チェーンでの定量的な改善データが公式に公開されている点は、他社にない強みです。
- すでにfreeeで会計・労務管理をしている → 「freee人事労務 雇用契約」機能(月額200円/ID)を検討する価値があります。ただし取引先契約も扱うならfreeeサイン本体の契約が別途必要です。
- すでにジンジャーシリーズで勤怠・給与を管理している → ジンジャーサインは連携メリットがありますが、料金非公開のため必ず個別に見積もりを取ってください。
- 「送信件数無制限」という料金思想に惹かれる → マネーフォワード クラウド契約は理論上マッチしますが、クラウド契約単体の月額料金が公式に非公開のため、必ず個別問い合わせで実額を確認してから判断してください。
どのサービスも、公式サイトの情報だけでは実際に自店で運用したときの総額まで見えてこない部分があります。この記事の比較表とコストシミュレーションを手元に、まずは自店の月間契約件数(新規採用+契約更新の合計)を数えてみてください。そのうえで、月50件を超えるようならGMOサインとクラウドサインの2社に絞って個別見積もりを取り、実績データの重みとコスト差、どちらを優先するかを店として決めるのが現実的な進め方だと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 5社の中で結局どれが一番いいですか?
A1. 単一の「一番」はありません。送信単価の安さで選ぶならGMOサイン(立会人型110円/件)、飲食チェーンでの実績・説得力で選ぶならクラウドサイン(全国70店舗チェーンでの公開事例あり)が有力候補になります。自店が重視するのがコストか実績の裏付けかで、選ぶべき軸が変わります。
Q2. GMOサインとクラウドサインの送信単価の差はどれくらいの金額になりますか?
A2. 月10件の送信なら年間で約44,880円、月50件なら約108,240円、月100件なら約187,440円の差になります(基本料金+送信単価で試算、税込)。送信件数が多い店舗ほど、この差は無視できない金額になります。
Q3. すでにfreee人事労務やジンジャーで勤怠管理をしている場合は?
A3. freee人事労務を使っているなら、「freee人事労務 雇用契約」機能(月額200円/ID)で雇用契約書の作成・送信・締結を安価に完結できます。ジンジャーシリーズを使っているならジンジャーサインとの連携メリットがありますが、料金が非公開のため個別見積もりが必須です。
Q4. マネーフォワード クラウド契約やジンジャーサインが料金非公開なのはなぜ検討しにくいですか?
A4. 公式サイトに具体的な月額料金が明記されておらず、送信単価も確認できないため、クラウドサインやGMOサインと同じ条件でのコストシミュレーションができないためです。設計思想(マネーフォワードの「送信件数無制限」など)は魅力的でも、実際にいくらかかるかがわからない状態で記事上おすすめすることは避けています。
Q5. 電子契約は業者との取引契約にも使えますか?
A5. はい、5社ともアルバイトの雇用契約書だけでなく、食材業者・工事業者などとの一般的な取引契約書にも利用できます。ただしfreeeサインの「freee人事労務 雇用契約」機能は雇用契約に特化しており、取引先との一般契約書を扱うにはfreeeサイン本体の契約が別途必要になる点は注意してください。
複数店舗オーナーが実践する経営ノウハウ
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